調律きまぐれ日記 vol.13

 

シュウマイショック

ある日
ある保育園に調律に伺いました。
保育園での調律の場合、子供たちがいない時間をねらってお伺いするのが
理想ですので、その日は遠足の日に予定していました。
しかし、当日はあいにくの雨、保育園に到着するとやっぱり遠足は中止に
なったそうで、遠足にいけないパワー全開の園児が走り回っていました。
「これは、普段より厳しいかな」と、覚悟を決めて作業をはじたのですが
それはそれは、凄まじい大声と足音で、なかなか思うように作業が進まな
くて、お昼休みも取らず、作業を続ける事にしました。

園児達はお弁当の時間になり、みんな座ってかわいいお弁当箱を広げて、昼食が
始まりました。
少し静かになったので、気持ちよく調律を進めていました。
そのときです。
わたしの足元に、シュウマイの空揚げが一つ、コロコロと転がって来ました。
振り向くと、男の子がこっちを見て、シュウマイを拾いにきました。
わたしは、おそらく拾って食べるのだろうと見ていたのですが、その男の子は
「うわーっ、落ちたし、もうたべられへんわ」と、言ってゴミ箱にシュウマイ
を捨てました。
          ショック!
わたしが男の子に、「かわいそうに、ざんねんやなぁ・・・」と声を掛けたとき
男の子のお弁当箱に、もう一つシュウマイがあることを確認して、ホッとしま
した。
もしも、シュウマイが一つしかなかったら、落ちたシュウマイを食べたかな?
「シュウマイ」って、メインのおかずで、ある意味、「シュウマイ弁当」だし
そのシュウマイが無くなるなんて・・・わぁー!!
などと考えながら、私は作業を続けました。
すると、また、シュウマイがコロコロと転がって来ました。
          ショック!
振り向くと、さっきの男の子がまたやって来て、「これも落ちたし、たべられ
へんなぁ」と、言って、シュウマイをゴミ箱に捨てようとしたので、わたしは
慌てて、「大丈夫、食べられるよ! おかずがないとご飯が食べられないのじゃ
ない? ほら、ゴミもついてないし、食べれば?」と、慰めようとしました。
すると、その男の子は「落ちたら食べられへん」と、ニコニコ嬉しそうに言う
のです。
私は不思議で、「なんで、うれしいの?」と、聞きました。          
すると、「僕、シュウマイ嫌いやねん、でも、お母さんがシュウマイ入れんね
ん、残したら怒られるし・・・」
           ショック!
つまり、シュウマイが落ちてしまったのではなく、わざと落として嫌いなシュ
ウマイを食べないで済む様にしていたのです。
なんてかわいそうなんでしょう。
楽しい遠足のお弁当のメインが、嫌いなおかずだったら、ショックだろうな。

  おかあさんへ、遠足のお弁当のおかずは好物にしてあげてくださいね。


 

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