ある日。
毎年、定期的に調律にお伺いしているお客様より一本のお電話を頂いた。
電話の内容は、「わが家にヘビが出まして、家族で捕まえようと追っかけていたところ、ピアノの裏へ逃げ込んだのですが、いくら探してもヘビが見つからないのです、もしかして、ピアノの中に入ったのではないかと思います。できればピアノの中を見てほしいのですが・・・」
な、な、なんと。
ネズミが入っているのは良くある事なのですが、私もヘビは初めての事でいったいどうすればいいものかと思いながら現場へ向かいました。
私が到着すると、そこには家族の方全員が、バケツや網、棒切れを持ってピアノをにらみつけていました。
私の登場に、みんながピアノの周りからはなれ、ピアノと私を取り囲む
様に配置につきました。まるで、アニメのヒーローみたいな私です。
さて、どうしょうかな?
まずは聞き込みから
私 「どんなヘビでした?」
お客さん 「どんなって、長かったなぁ」「これくらい」
手を広げて見せられた。
私 「でかいな」「マムシ?」
お客さん 「さぁ・・・」
私 「マムシやったら恐いな」「毒あるし」
お客さん 「大丈夫、大丈夫」「これ使って・・・」
軍手を渡された。
仕方がないのでとりあえずピアノを分解することにしたのですが、軍手で大丈夫なのかなぁ。
毒蛇のキバってケモノの皮も突き抜けるんちゃうの?
ビクビクしながら少しずつ、ピアノの部品をはずしていきました。
バラバラになって行くピアノ、全然、敵は現われません。
ついに、すべてをバラしたのですが、ヘビは出てきませんでした。
ほっとする私の周りに、不満気な家族。
私 「ピアノには入っていないみたいですね」
お客さん 「・・・・・・」
私 「どこかから外へ逃げたかもしれませんね」
お客さん 「見つかるまで寝られへんわ・・・」
私 「大丈夫、軍手をはめて寝れば・・・」
「それでは失礼しますね」神の使いといわれるヘビが家に現われたのですから、きっといいことが
ありますよ。